ずいぶん前、彼は、新人として私のチームに配属になった。
彼は外国人で、4ヶ国語を使いこなし、日本のトップレベルの大学を卒業後、日本で就職した。
一緒にプロジェクトを進めたが、判らないことがあっても、少しヒントを与えると、てきぱきこなしてくれた。
非常に能力が高いと感じた。
その後の組織の変更で、残念ながら仕事を一緒にやることはなくなってしまった。
彼は、非常に上昇志向の強いタイプだった。一つのプロジェクトをこなし、評価され、ポジションがあがり、さらに大きなプロジェクトを責任をもって進めたい、という意思が強かった。
部長も彼を評価しており、彼にもっと責任ある仕事をさせたいと3年間、人事と掛け合った。
しかし、人事の反応は、やはり年齢的なものを重視し、3年間据え置きにさせられた。
何とか、来年こそはとがんばっていた彼は、さすがに3年もたって、あきらめてしまった。そして日本企業の仕組みを理解した。
彼は、タイミングよく外資系の大企業からヘッドハンティングされた。
悩んだ結果、その会社に移ってしまった。
そして、世界中から集めた、普通にMBAを持っているような優秀なメンバーで構成されたエリート育成プログラムに組み込まれ、色んな現場でプロジェクトを任されているという。
そこはそこで、現場たたき上げとの軋轢なんかもあって、楽しいばかりではないらしいが、いい経験をしているようだ。
こういうプログラム自体非常に外資系らしいところだ。
退社の際に彼はこう考えたという。
15年後の自分をイメージしたときに、このまま年功序列で順番待ちをしながら仕事を進めても、夢が持てない。
確かに、ポジションのない40過ぎのおっさんは一杯いる。
実力があって結果を出せば、年齢に関係なく評価される、欧米系のやりかたのほうが、がんばりがいがあるのだと。
早く決断できてよかったと思う。