2010年02月25日

日本の製造業の労働生産性は低いのか

私の接してきた北米やNZのエンジニアは、残業も好きでやる以外ほとんど無く、休日も普通に取れて悲壮感など感じさせることは無かった。

日本のエンジニアとなぜこうも違ってくるのかと考えてしまう。総合的に見て個々人の能力にそれほど差があるとも思えない。

日本の労働生産性が低いという話になるのかと思いきや、製造業に関しては別に極端に悪いわけでもない。

3. 日本の製造業の労働生産性(2007年)はOECD25カ国中第14位。ドイツに抜かれ順位を1つ下げる。
日本の製造業の労働生産性水準(2007年)は80,400ドル(947万円)で、OECD加盟国でデータが得られた25カ国中第14位(図4)。
ドイツに抜かれ、2006年の第13位から1つ順位を下げた。先進7カ国でみると米国、フランス、ドイツに次ぐ第4位となっている。
米国製造業の労働生産性を100とすると日本の労働生産性は79。
(->pdf)
ドイツなど寧ろあれだけ休みをとって残業もしないのに、輸出世界一を誇るというのだからさぞかし労働生産性が高いのかと思いきや、日本とほとんど変わらないというのだから驚きだ。

つまり[日本の働きづめの人の労働時間-ドイツ人の労働時間]を誰かが代わりに有給で遊んでくれているということになろう。
労働生産性の低さにビビるのはもうやめようというブログを見ると
さて、労働生産性は、就業者一人当たりの付加価値で計算される、と書いた。失業者はカウントしない。
という点に着目している。
スペインの失業率は19.4%に達し、フランスやアメリカは10%だ。それに比べて日本は、失業率が高くなったとはいえ、未だ5.2%の水準に留まっている。
さらに若年層では、
スペインは若年労働力の44%が失業状態だ。福祉国家で有名なスウェーデンは26.5%。アメリカは19.1%だ。これに対して日本は8.4%という水準だ。

多くの雇用機会を生み出すおかげで労働生産性が落ちているというわけだ。ワークシェアリングである。
転職は35才以上が有利というエントリに書いたが、こちらの若年層エンジニアの就職事情とも合致する。

日本の場合、それ以上に無能化が進む(と元から無能な)生産性の著しく低い中間管理職の労働時間が相当なハンディキャップになっているであろう。
日本での経験も含めて感じるのは、どれだけ無駄に見える会議でも、必ず一人は好きでやっている人間がいて、その人間が決定権を握っている、という点です。演説したいとか、責任を分散したいとか、動機はさまざまですが。会議開きたい症候群が世代によるものか、与えられた地位によるのかはよくわかりません。
Isaoさんコメント

さらにその人たちの設定する無駄な会議にも付き合わないといけないのだから、これでドイツ並みでやれてるのって逆に凄いのかもしれない。
それはつまり、職場内で著しい生産性の違いがあっても同一賃金で働くということが、無意識にせよ一部の人間が耐え忍んでいることで、成り立っているのであろう。

しかし、その残業時間の延長や根性で死ぬまで働くような仕組みでは限界に来ていて、効率化の競争に敗れつつあるのが現状であろう。

池田信夫氏のシステム間移行と宗教戦争にこうある。
いま日本の直面している変化は、人々が自覚している以上に大きなものである。それは伝統的な共同体から日本人が継承した長期的関係によるガバナンスから、近代西欧に特有の契約社会への移行だ。
現代の日本でも、デジタル革命によって労働者を企業に閉じ込める日本型企業コミュニティの優位性がなくなり、20世紀初頭以降、一貫して続いてきた企業の大規模化のトレンドが逆転し始めている。
しかし経済圏がグローバルに広がるときは、両者の効率の圧倒的な差によって、このシステム間移行は避けられない。それはかつては100年以上にわたる宗教戦争を引き起こしたぐらい大きな変化であり、平和裡に進むとは限らない。おそらく日本でも、もっとも大きな変化はこれから来るだろう。

これは避けられないことだと思うし、必ずしも悪いことではないと思う。無駄な人を省くだけで世界一の労働生産性になるのは間違いない。
無能な40歳代以上の人だけ、梯子を外されてちょっと辛い思いをすることになるだけだ。
posted by りもじろう at 15:37 | Comment(2) | TrackBack(0) | ニュージーランドの生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントへの言及ありがとうございます。かつて、団塊の世代さえ消えてくれれば日本企業も気楽になれるかな、と考えていた時期がありました。残念ですが、企業に一定期間勤めると体質を引き継いでしまうようで、いわゆる長時間労働文化は続くのでしょう。池田氏の言うとおり、将来は保守化したグループとそうでない人たちの冷戦(意思疎通がとれない・とりたくない状態)が長期間続くような気がします。いや、すでに起こっているのだけど、まだそれほど目に見えていないだけで。
Posted by Isao at 2010年02月25日 17:33
整理してみました。
同じ仕事(売上)に対し、日本は例えば5人で行い、アメリカは3人で行うとする。日本がアメリカと同様の給料を一人ひとりに渡そうとすると労務費が上がってしまう。そこで日本では基本給(時給)を下げてアメリカと同水準の労務費を保とうとする。しかし、実際には一人ひとりがアメリカと同じか、それ以上の時間働く為、労務費は思ったほど下がらない。そして会社の利益はその分減る。日米の利益の差は役員の報酬や株主の取り分の差として表れる。日本は仕事毎の労働人数が多い分、「生産性」は下がり、基本給が低い分だけ、労働時間は増える。労働時間が多い分、「社畜」が増える。

こんなところでしょうか。
Posted by another bot at 2010年02月26日 19:10
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