2010年04月19日

人材の流動化か囲い込みか

最近、日本のSI企業と仕事をする機会あった。
久々に衝撃的な体験だった。

とあるシステム案件の下請け的開発依頼だったのだが、
1.アーキテクチャがおかしい
ビジネス系の人が直接実装担当のエンジニアに指示を出している。丸投げである。よってアーキテクチャが根本的におかしいのだが修正できない。
アーキテクト不在。

2.ドキュメントが無茶苦茶
基本なぜかエクセルで書いている。読みにくいことこの上ない。さらにバージョン管理が無茶苦茶である。ほとんど読んでも意味の無い古いドキュメントだらけで解読が非常に難しい。アプリのバージョン、開発環境などもドキュメント毎に違っている。ビルドするとドキュメントが自動生成されるなんてことは一切ない。
ドキュメント担当不在。

3.プロダクトのソース管理が無茶苦茶
ソース管理ソフトはつかっているものの、理解不能なブランチに分かれていて同等製品が複数派生している。修正に手間がかかる。
ソース、プラットフォーム管理者不在。

4.ユニットテストのコードがない
ユニットテストの自動化を一切していない。これもエクセルでテスト項目があげられていて開発者がチェックしていく。
テスト担当不在。

5.GUIがひどすぎる
お客にそのUI見せただけで信用度がた落ちである。いくらショボイ機能しかなくてもUI一つでもう少し印象が変るのに実装エンジニアのセンスそのまま。
デザイナー不在。

6.ざっくりなマネジメント
形だけのマネジメントは存在するが、根性論だけで根拠もなく工数見積もりXXヶ月となる。上記のような問題点は不問であり、ざっくり勝負。
マネジメント不在。

そのシステムの開発オリジナルメンバーが転職してしまった状況での残務処理ということであった。
ここから、日本のIT企業では単純に人材の流動性が高まるとリスクが非常に高いことがわかる。
・アーキテクトが転職した場合、それに見合うアーキテクトをあてがうという流れが自然であるがそれがなされない。恐らくオリジナルの開発グループでも担当が明確になっていなかったので、どういう人をあてがえばいいのかはっきりしないのだろう。

・人が居なくなってしまうリスクを過小評価しているためか、ドキュメントの内容とそのバージョン管理などが非常に疎か。

・マニュアルですべてのテストも開発者がこなしてしまおうというあたり、人使いの荒さが見受けられる。

・ドキュメント担当、デザイン担当、アーキテクトなど担当を明確に設けないため統一感がなく、その時々の担当者の個性が出てしまいプロダクト全体として非常に醜い。

・トップが根性論を持ち出すので、以上のような分析はなされず、新たな対応もされない。
つまり日本式の担当を明確化しないやり方だと、お互いを補完しあう関係が重要なのであり、同一メンバーで最後までやる分にはなんとか回せていけていた。それが人材の流動性が高まることによって補完しあえず、穴だらけになっていく。個々人の個性が悪い方向に作用していってしまうのだろう。
かといって終身雇用の囲い込みが難しくなっている現在、責任範囲の明確化を進めるのか、囲い込みを再度強化するのか(可能なのかは不明だが)選択せざるを得ない状況なのではないだろうか。さらに責任範囲を明確にするのは担当者をただ置くだけでない。その担当がその道のプロとしてやっていくことを担当者も会社も覚悟しなければならないのである。

私が関わったこの会社がたまたま酷かったのであり、他の会社はもう少しうまくやっているといいのだが。
posted by りもじろう at 14:06 | Comment(6) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月12日

ソフトウェアのアウトソース

渡辺千賀さんのエントリーにはシリコンバレーではアウトソースが間に合わないのでどんどん内製していくという話が紹介されている。
最先端のウェブサービス開発の現場は、とてもアウトソースなんかできない状況になっている。「仕様書を文章で作って、それを誰かが作る」なんていう悠長なやり方は通用しない。どんどん機能開発して、どんどんリリースして、ユーザーのフィードバックを元にさらに進化させる、というのを、毎日行い続けないとならない。
私が働いていたカナダのベンチャーもNZのテレコム系の会社も下請け、孫受けである。
どちらもインフラ系のシステムで、業務内容が大規模、複雑で仕様が比較的安定しているためか、仕様書ベースでのシステム納品を行っている。ウェブサービスのスタイルとは違う。
しかし、下請けといっても日本のそれとはかなり違っていることが経験してみて分かった。

・上から下への丸投げはない。
・社員の給料は上も下もそれほど変らない。
・勤務時間も変らない。
・休日数も変らない。
・上から下、下から上への人の異動(転職)も頻繁に起こる。
・なので上だから偉いと勘違いして威張っている人もいない。

下へ行くほどコンポーネント開発であり、上にいくほど設計規模が大きくなるという守備範囲の違いがあるだけだ。

というわけで下に行くほど奴隷的扱いの日本式下請けとは随分と違う印象である。
そのため仕事がほしいから、何が何でも安く受注するということもなく、価格以外にシステムのアーキテクチャ、パフォーマンス、メンテナンス性などの性能ベースに他社と競争することで受注競争に勝つというスタイルである。
NZの会社は自分たちのシステムをシンガポールなどに売り込みにいったりもしており、現在の発注会社べったりというわけでもないし、人の派遣などもない。

従業員が上も下もほぼ同等の扱いなので、安く受注して死ぬほどサービス残業させるというスタイルで仕事を押し付けられない。
そんなことをしてしまえば社員は一瞬で居なくなるので経営者にとって、そういう選択肢は存在しない。
なので、受注が減って経営が厳しくなると上だろうが下だろうがレイオフするだけだ。

会社間も会社と社員の関係もあくまでも疎なのであった。

posted by りもじろう at 09:56 | Comment(2) | TrackBack(0) | ニュージーランドの生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月01日

NZでもワーカホリックが増えている?

NZheraldで「Kick a nasty work habit」という記事があった。
ワーカホリック(仕事中毒)について取り上げている。
NZでも不景気のおかげで1/3の人が一年前より労働時間も長く、ストレスを感じるようになっているという。

記事中ワーカホリックの特徴として出てくるサインは
一日中携帯をつけっぱなしにして家族といるときでも仕事を優先している。
疲れているのに、自分ができる以上のことを引き受けてしまう。
残業してしまう。しばしば週末まで。
家でも落ち着かなく、リラックスできない。
人に生活パターンが不健康と言われた。
マネージャーに仕事の優先度を付けるように言われる。
子供の成長過程での重要な事柄を見逃している。
重要なのは労働時間では無く生産性を上げることだと指摘する。
まず自分がワーカホリックになっているということを自覚するのが重要である。

ワーカホリックに打ち勝つには
自分の最重要のキータスクを上司と確認する
仕事を離れて休みをとれるように友人とスケジュールをたてて、それを守るようにする
ジムに入りなおしてトレーナーにコミットメントする
家では携帯を切ってメールが届くのを見ないようにする
日々考える時間を確保する

一生懸命働くことと、ワーカホリックになることは別だと指摘する。
ワーカホリックは強迫観念によってもたらされている。
ワーカホリックは中毒性の行動である
効率は落ちる
高血圧などの症状がでる
日本では一年に1000人過労死で死んでいる
もしそこから抜け出したいなら問題を認識する必要がある
The problem is said to be so bad in Japan that there's even a name for death by overwork - karoshi. Some people think it causes 1000 deaths a year.
悪化すると最悪死に至る。日本では働きすぎによる死を過労死と呼んでいて年に1000人が死んでいると考えられている。

NZの人にとっては過労死という名前があるのが驚きであるようだ。
posted by りもじろう at 07:38 | Comment(1) | TrackBack(0) | ニュージーランドの生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする